鯉のぼりプロジェクト2013

日本/シリア/ウィーン

〝この世界で私たちは一人ではないということ〟

 鯉のぼりは、中国の伝説にある鯉のように難関な滝でも力強く泳ぎ登ってゆく〟ことができるようにという、子どもの健やかな成長への願いが込められた日本の伝統風習です。この願いをたくさんの子ども達と共有すべく、2011年より、ウィーン、そして2011年3月に大震災に見舞われた東北被災地で、独自の鯉のぼりを作るワークショップが行われました。ウィーンで活躍している美術家の方々の制作した鯉のぼりを展示したチャリティー展では、その収益を被災地に寄付しました。被災地にはウィーンから応援メッセージの鯉のぼりも送られ、また被災者によって作られた鯉のぼりもウィーンで掲揚されました。避難生活をする人が、希望を託して描くこと、交流を通して、〝まだ応援してくれている人がどこかにいる〟と気付くことは、精神面での大きな支えとなったというご報告をいただきました。

 2013年 プロジェクト趣旨

 子供達は、特に言葉では言い表せないものをさまざまな形で私たちに語りかけています。余裕もない程貧困に苦渋に暮らしても、地面に描かれる絵は絶えることがありません。

 この企画に参加してくれていた仲間からシリア難民のおかれている状況を聞き、2013年より、アラブ人女性の会の協力により、トルコにあるシリア難民キャンプでのワークショップを行っています。2011年からの始まったシリアでの政治的問題からの内戦被害、また東北大地震、津波による自然災害・今もなお続く生活困難・また原発からの放射能問題。事情は違えども、困難な状況下で生きることを強いられた人々が、 自らの「暮らし」をその手に取り戻したいという願いは同じです。その願いを、困難を力強く乗り越えていくさまを象徴する鯉のぼりに託し、日本、ウィーン、 シリアで作られた、こいのぼりの交流を通し、状況を伝えあい、互いに励まし合うことで復興や問題の平和的解決の力となる事を願います。

芸 術家や技工から成る私たちが、他の分野で働く人々や、別の文化や経験をもつ人々と協力しあいできる行動とは何か。日本の文化である「鯉のぼり」を通して文 化を知り他人を知ると言うこと。アートという目に見える形で、他の場所で生きる人々のことを思ったり、また自分や他人の未来に希望を託し、このプロジェク トに参加してもらえたらと思っています。